
大学4年生の里乃ユキは、ロボット工学の近藤研究室に配属された。
ユキは、ハル先輩とナツ先輩がいる女子グループに加わった。
ハルとナツは、人間とロボットが共存し、互いに助け合う世界を理想としていた。

ユキは、実験用ロボットの機体制作をまかされた。
卓上で動く人型ロボットを3体作成し、ハル式、ナツ式、ユキ式と名付けた。
ユキ:「ハル式は、何色にしますか?」
ハル:「そうね。茶色かな。」
ユキ:「ナツ式は、何色がいいですか?」
ナツ:「私のは赤くして。」
ユキ:「わかりました。じゃあ、私のは水色にしてもいいですか。」
ハル&ナツ:「もちろん。ユキちゃんのが一番かわいいわね。うふふ。」

ハルとナツは、これらのロボットのAI学習でプログラムを合成する新型エンジンを開発していた。
このエンジンの手本となったのは、盲導犬の育成方法であった。
仔犬が人間の家族と一緒に過ごして、愛情を受けることによって、人間に仕える能力を身につけるのと同じだ。
ロボットは、第1段階で人間の母親と接してマザーモデルを学習し、第2段階でその子供と接してチャイルドモデルを学習する。

マザーモデルとチャイルドモデルから自律型プログラムが生成される。
自律型プログラムで動作するロボットは、人間と共に生きることを喜びとして行動するようになると考えた。
研究室では、第1段階としてマザーモデルの学習を実験していた。
ハル、ナツ、ユキは、母親役となって、それぞれのロボットといつも一緒に過ごし、マザーモデルを学習させた。

近藤:「君たちの論文を読ませたもらったよ。大変良いじゃないか。ロボットの適応力が格段に向上している。できれば、第2段階も楽しみなのだが・・・。」
ナツ:「先生、それは無理ですって。だって、私達には子供がいないんですから。」
全員:「(笑)」

近藤:「そうだな、失礼した。そうそう、ハルくんは、関西の大学に教員採用されたんだったな。」
ハル:「はい、関西で別の研究テーマに加わります。ママロボットの方は、少しお休みです。」

近藤:「ナツくんは、外国の大学院に合格してよかったな。」
ナツ:「私は、外国に行ってからもこの研究を続けます。チャイルドモデルの成果、楽しみにしていてください。」
全員:「えー!(笑)」

近藤:「ユキくんは、どうするのかな?」
ユキ:「私は卒業して、研究は終わりにします。もう一つの夢がありますから。(ニコ)」
近藤:(みんな、幸せになってくれ。)